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半透明 ダイジェスト

moka haruta

本文

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……例えばの話だ。



もし、人の心が読めるなら、私は今この授業でいつ先生に当てられるかが分かる。



友達とだってケンカなんか絶対しなくて済むし、もしかしたらその力を利用して大儲けできるかもしれない。



それはなんて、便利な能力だろう。

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「……俺は、人の心が読めるんだ」



それはなんて、哀しい能力なのだろう。





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「本当に、誰にも懐かないのね……。なんにも興味を示さなくて、いつだって無関心で」



こんな能力、欲しくなかった。



人の心の声を聞くたびに、



全身を駆け巡る罪悪感で、窒息しそうになる。



君だって、こんな俺といるのは、怖いはずだ。

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日向君、私ね、

本当に一番怖がっているのは、能力とか、そんなんじゃないの。



こんな汚い自分を知られたら、嫌われてしまうんじゃないかってことなの。



それが怖くて、仕方ないんだよ。



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「……じゃあ、ちゃんと、またねって言ってよっ」



「え……」



「ちゃんと、また会おうねって、また会えるよって言ってよ。もう、誰かに急にいなくなられるのは嫌だよっ……そばにいてっ……」



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ねぇ、サエ。



傷つけるのが怖くて、傷つくのも怖くて、そんな臆病者の俺でも傍にいていいの?



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「俺、人とは違うけど、それでもいいの……?」



「日向君がいいっ……そばにいて」



サエに出会って、俺は初めて知ったんだ。



声にしなくても言葉にしなくても伝わる想いって、本当にあったんだ。





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「俺、ちゃんとこの『能力』を理解したいんだ」



私だって力になりたい。なにか出来ることがあるのなら、手伝いたい。



でも、そう思えばそう思うほど、

好きになればなるほど、



あなたは遠のいていく気がした。



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そんな時にふと読んでしまった、おじいちゃんの日記――……



『どうか泣かないで下さい』



この一文は、一体どういう意味?



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「サエ、この手紙はね、一番大切な人に渡すの」



「一番大切な人……?」



「もう声も出ないってくらい困った時に、開けなさい」





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「全ての記憶をリセットすれば、普通の人間になれるの。ねぇ、そうしたらもう思い切り人を愛せるのよ。友人でも恋人でも誰でも、もう警戒しなくていいの……っ」





それって、サエと出会ったことも?



抱きしめた時の、あの愛しさと嬉しさに満ち溢れた感情も?



全部消えるってこと?



そんなの絶対に嫌だ。



だったら俺は、いっそ――……





「俺からもう、解放してあげなきゃね……」



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サエ、俺は、幸せだった。本当に、幸せだったよ。



「俺は、いつもサエのこと考えてるから」



「日向君、どうしたの……悲しいことがあったの……?」



「サエのこと、いつも想ってるよ」



「日向君……?」



「それだけは、どこかで覚えていて欲しいな……っ」





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忘れないからね。



俺がサエの分も覚えておくから。



もう会うことはないだろうけど、きっとこれから先、ずっとサエのことを想ってる。





忘れられるはずが無いからね。



だって、こんなにも好きだったんだから。







もう俺を思い出すことはないだろうけど、どうか君がこの先も幸せに笑ってくれるように願ってる。





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でも、今日だけは、泣いてもいいかな。



君の人生にしたら本当に僅かな時間だったのかもしれないけど、それでも、俺は――……





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『ひなたくん、嫌だよ、私、忘れたくないっ……』







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……例え君が俺を忘れても、





その分代わりに俺が覚えておく。



一つ残らず覚えておくよ。



サエの好きなものも、嫌いなものも、全部全部全部。



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俺が、一生忘れないでいてあげる――……





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半 透 明 の ラ ブ レ タ ー







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あとがき

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